前章からのつづきになります。
機能不全家族で育った子どもは、家族の中でつねに緊張し、安心感やリラックス感が得られない時間を過ごしてきています。
そのため、家族内での暗黙のルールが子どもに伝わり、子どもの自分が、子供らしく振る舞ってはいけないと、自分を抑えるようになってしまいます。
その暗黙のルールとは、次のようなものです。
・感じてはいけない
感情を素直に表現してはいけないと思うようになります。
「自分の本当の気持ちは、決して誰にも言うまい・・・」
・話してはいけない
家族内で問題について話し合うことは良くないと思うようになります。
「なんかちがうと思うけど、言っても仕方がない・・・」
・信頼してはいけない
人を信じても、ろくなことはないと思わされるようになります。
「簡単に信じちゃいけない。疑わなきゃ・・・」
また、機能不全家族の中で異様な緊張感を感じた子どもは、自らが様々な犠牲を背負う役を買って出ます。
そのタイプには、次のような種類があります。
・クラウン
空気を和ませようと、自らがピエロとなり、冗談を言ったり、わざとまぬけな態度を取ったりします。
・プラケーター
子どもの立場でありながら、親の愚痴を聞く側に回り、慰め役を演じます。
・イネーブラー
親を支える世話役を買って出ます。
・ロスト・ワン
不安な状況を避けるため、片隅で息をひそめ、自分の存在を忘れ去られたもののように振る舞います。
・スーパーヒーロー
優等生を演じるなど、親にとってのいい子になりきります。
・スケープゴート
悪い子を演じ、トラブルを起こすことで、親の問題を見えなくさせます。
子どもは、このような痛々しいほどの努力を重ねて、自分の存在を親から認めてもらおうとするのです。
しかし、親から見ればそれは都合のいい評価にしかならず、子どもはますますその役割を強化していくことになります。
そして、その仮面が成長過程で自分のキャラクターに馴染み、大人になってもそれが本当の自分だと錯覚してしまうのです。
このことから、アダルトチルドレンは混乱した心を抱えたまま大人になり、社会や他人との関わりの中で生きづらさを感じてしまうようになります。
この生きづらさの原因となっているのは、機能不全家族によりもたらされた自尊心の欠如と言い換えることができます。
ありのままの自分自身を認められず、自己の意識がしっかり持てないまま成長してきたアダルトチルドレンは、地面に根っこを伸ばし、大地から養分を取り入れる術を知らない根無し草のような心もとなさを抱えています。
自分がアダルトチルドレンであると自覚するのであれば、この自尊心を取り戻し、自分で自分を愛し、守り、大切にすることを学んでいくことが必要です。
そのための一歩として、インナーチャイルドという定義について知り、自分の内なる子どもであるインナーチャイルドを癒すことが第一歩といえるでしょう。
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